事故で高齢者や子供が死亡した場合の慰謝料計算基準
事故で大切な子どもや愛する両親、あるいは祖父母を亡くしてしまったら、これ以上の悲しみはありません。しかし遺族としては、大きな悲しみを抱えながら、加害者に対してしっかりと慰謝料の請求していく必要があります。
ここでは、仕事を引退した高齢者や収入のない子供が死亡した場合、慰謝料額はどのように計算されることになるのか、その目安について解説します。
加害者に対し請求できる慰謝料の範囲
被害者死亡に至った場合、加害者に対して「死亡慰謝料」と「逸失利益」を請求することができます。他にも葬祭費用や死亡前にかかった入通院費用等も考慮され、最終的な金額が決定されます。
日弁連が発行する「赤い本」に掲載された損害賠償額算定基準によると、被害者が一家の支柱として生活を支える人物であったか、母親や配偶者であったか、あるいはその他の人物であったかの3種類に分類し、慰謝料計算の目安を設けています。
高齢者や子供はいずれも「その他」に分類されており、一家の支柱や配偶者とは別枠になっていることからも、慰謝料計算の基準となるのは年齢や性別ではなく、家庭内でどのような経済的役割を担っていたかが重要ポイントとなることがわかります。
もし被害者が事故で死亡しなければ、この先も就労し収入を得ていたという考えに基づき、加害者に対しては、死亡慰謝料に加えて逸失利益を請求することができます。
高齢者であっても、生前に年金を含む収入があった場合は逸失利益が認められますし、未就労の子供であっても将来的に就労する可能性が非常に高いことから、同様に逸失利益が認められます。
死亡慰謝料は3つの基準によって大幅に変わる
死亡慰謝料を計算する際、以下の3つの基準のうちどれをベースにするかによって金額は大幅に変わります。
自賠責基準の場合
死亡被害者に対して一律350万円が支払われ、遺族に対する慰謝料も別途考慮されます。慰謝料請求権があると認められる遺族は、配偶者・親・子供のみで、その人数が1人であれば550万円、2人なら650万円、3人なら750万円が支払われます。
生前の被害者に扶養されていた者がいれば、200万円が加算されます。
裁判所基準の場合
損害賠償額算定基準を示した赤い本によると、死亡被害者が一家の支柱だった場合は2800万円、母親や配偶者だった場合は2500万円、独身者や高齢者、子供の場合は2000万円程度としています。
これらの金額はあくまでも目安であり、各々の事情や家庭内での役割等に応じて調整されることになります。
比較してみると、自賠責基準と裁判所基準では、高齢者や子供の慰謝料の額に約5倍以上もの差が生じることがわかります。
任意保険基準は自賠責基準よりも若干多い程度と言われているため、裁判所基準の金額を超えることはほぼありません。
従って、遺族が相手方保険会社の言うなりに示談を進めてしまった場合、本来受け取れるべき金額よりもはるかに低い額を提示され合意に至るリスクがあることを認識しておきましょう。
高齢者と子供の逸失利益の考え方
死亡した場合の逸失利益は、以下の計算式を使って算出します。
「生前の年間基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」
高齢者の場合は年金を受け取っている人が多く、死亡しなければ年金を受け続けられたことから逸失利益における基礎収入として扱うことができます。
年金生活者は収入の多くを生活費に充てる傾向があるため、生活費控除率は少なくとも50%として計算します。
また、将来的に継続して受け取るはずだった収入を現時点で受け取るメリットがあることから、中間利息を控除するという考えに基づき、ライプニッツ係数を乗じて金額を算出します。
高齢者の場合、厚生労働省が公開する簡易生命表の平均余命に基づくライプニッツ係数を用います。
子供には収入はありませんが、高校卒業あるいは大学卒業をもって社会に出て就労するようになります。従って、死亡により将来的に得られた収入が絶たれたと考えることができ、逸失利益が認められます。
未就労の子供の場合、その基礎収入には賃金センサスにおける全労働者平均賃金を用い、生活費控除率は女子で45%、男子で50%を適用します。18歳未満の子のライプニッツ係数については、就労可能期間の終期である67歳のライプニッツ係数から始期の18歳のライプニッツ係数を差し引いた数値が用いられます。
大切な家族の死亡慰謝料は自ら経験を持つ当事務所弁護士にご相談ください
当事務所弁護士も、司法試験の勉強をしていた頃に交通事故で母を亡くしています。勉強中の身ではあったものの、それなりの知識を備えていたため、不起訴処分になる可能性のあった加害者を罰金刑に導くことができた経験を持っています。
つまり、被害者側としても、事故知識や法的知識を持つか持たないかで結果に雲泥の差が生まれることを、身をもって体験しているのです。
死亡事故の場合、被害者の遺族はパニックに陥り思考停止の状態になりやすく、自分が当事者であるという感覚を持てず、様々な手続きを行う力が萎えてしまいやすいと言えます。
特に子供を亡くした場合は、親の受ける精神的ダメージは甚大です。加害者の刑事罰の手続き等は、深刻な精神的ダメージを負った中で難解な事柄を行うのと同じことですから、気力を失ったまま手続きに参加することになりやすいのです。
さらに加害者に対する慰謝料請求では、相手方が居直る傾向もあることから、遺族は常に重圧に耐えて一連の対応をしなければなりません。
その辛さは想像を絶するものがあります。
家族を事故で失った経験を持つ当事務所弁護士であれば、被害者の心情に寄り添いながら、しっかりと刑事及び民事の両方で相手を追及していくことができますので、そのためにもできるだけ早期に当事務所にご依頼を頂き、弁護士の支えを得ながら事件解決を目指すことを強くお勧めします。